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Jane Jacobs[ジェーン・ジェイコブズ]



とうとう出ましたね。山形浩生による新訳!

翻訳のあるものは以下のとおり(2004/1/1現在で、入手可能な版へのリンクを付した)

参考

  • 現実に経済活動がどう機能しているか

『市場の倫理 統治の倫理』[原著:1992]

原著のタイトルにあるように、それぞれのバックグラウンドをキャラクタライズされた複数人の登場人物によるダイアローグ=対話形式を採っている

  • 文庫版には、冒頭にキャラクターのイラストと属性の紹介が載っていた。
  • 『経済の本質』[原著:2000] も同じく対話スタイルで書かれている。登場人物も一部共通。こちらの本文中には「市場の倫理~」について次のような説明がある。「この本は働き手のちがいに応じて倫理体系も異なるのが適切である――たとえば一方で警察官、議員、聖職者、その他公的信任を受けている人たちに適した倫理と、他方で製造業者、銀行家、商人、その他商業従事者に適した倫理とは、ちがっている――ことを探求するために、アームブラスターが立ち上げた小グループの報告と議論を、彼女とアームブラスターが共同編集したものである。」(文中の彼女とは、この小グループの一員ホーテンス)

最初に、訳題にある二つの倫理の体系、それぞれの徳目が示される。

  • 二つの体系については、こちらにリスト(英語版)が載っていた。MORAL SYNDROME AとBというところね
  • 「「たった二つなんて言わないで。二通りの生活があるなんて、贅沢で特例で驚異的であって前例がないのよ。二通りの生活方法があるのは人間だけよ。他のあらゆる動物には一通りしか生活の方法がないのよ。説明するわ。・・・」」(p.74)
  • 「「待った!」アームブラスターが叫んだ。「あまり急がないでほしいな、ケート。いま君が言ったことは決定的に重要だと思う。戦争は地獄だ。それはみんな承知の通りさ。君がいま言った言葉に従えば、戦士は、勤勉の徳を商業倫理からつまみ食いすることによって、地獄のさらに奥底をめぐることになる。恐るべき混合独特の怪物というのは、自分自身の倫理体系を固守しないで、どちらの倫理体系からでもお好みで道徳律を選ぶ。つまり二つの道徳体系を一緒くたに混合する組織のことではないのか? 軍隊以外の組織や制度にも同じことが当てはまるのではないかね?」」(p.114)
  • 救いがたいシステム的腐敗の法則
  • カースト、倫理選択によるやり方

  • 『市場の倫理 統治の倫理』『経済の本質』と読んできて、『都市の経済』に入った。『市場の~』『経済の本質』は既に述べたように、複数の登場人物による対話形式なのだけど、どちらにもエコロジストが出てくる。が、同じエコロジストと言っても、まったく違う思想的なキャラクター付けが行われていて、本の中で果たす役割もまったく違う。『市場の~』のエコロジストは基本的にバカにされているように思える。一方『経済の本質』の対話をリードするのは、エコロジストである。さて、それぞれどのようなキャラクター、思想を持った人間なのでしょうか・・・。
    • ちなみに、二つの本にエコロジストが出てくることに関して次のような話の筋がある(これはどーでもいいことが)。まず『市場の~』での対話がいろいろ進んだ地点で、ある登場人物とエコロジストが付き合いだしたと告白する。二人は結婚するらしい、ってな具合で話は終わっている。んで、『経済の本質』の第一章のタイトルは「なんと、またエコロジストだって」。先のエコロジストと別れたと言う登場人物が再度現れ、今つきあっている男性を新たな対話の場につれてくると、それがまたエコロジストと言う。
  • あと、ソ連への批判が激しい(まあ、登場人物の発言としてだけど)のも印象的。
  • 印象論だけど、『経済の本質』の方はポジティブな空気を感じた。というのも、こちらの本は、経済活動のポジティブな面を救い出そうとする、ところがあるからかな。しかしそれらは、生態学とか生物学、進化論などを引いてきて語られるもので、丁寧に読まんとまずいとも思った、がとりあえず一読という感じ。