目次
アカデミックなオフィシャル情報は
いくつかの論文・エッセイ †
- 『プロテスト・ソング・クロニクル~反原発から反差別まで』(詳細)に寄稿されている模様 →amazon [2011-07-20]
- 書評:柏木博 『探偵小説の室内』=「無力な個人を疎外する社会システムに対する懐疑的なまなざしを内に秘める――「室内」というテーマを結果的に脱構築していく」(『図書新聞』 3020号 2011年07月02日)
- 「象とトランペット――『ダンボ』の深層 」(『モンキービジネス』 2011 Spring vol.13 pp.268-294)
- はじめに――ピンクの象はなぜトランペットを吹くのか?/一、苦悩という名の希望――障害学の射程/二、響きあうマイノリティ――人種と階級の政治学/三、クィア・ダンボ――多文化の飛翔/おわりに――ディズニーとアメリカン・モダニズム
- 「ファルセット・モダニズム―ブルースとアイデンティティの攪乱」(『ブルースに囚われて―アメリカのルーツ音楽を探る』, 2002 収録)
- 「母性の光と影――ウィラ・キャザーの『おお開拓者たちよ!』」、『アメリカ小説の変容』(ミネルヴァ書房、2000) pp.200-214
- 「昭和の裏声―歌謡曲とジェンダー」(『ユリイカ』 1999年3月号 特集=歌謡曲)
- 「越境するケルアック あるいは、他者への郷愁」(『ユリイカ』 1999年11月号 特集=ケルアック―ビートの衝撃)
『どうにもとまらない歌謡曲――七十年代のジェンダー』 †
目次 †
- Ⅰ 愛しさのしくみ
- 1 愛があるから大丈夫なの?――結婚という強迫
- 2 あなたの虚実、忘れはしない――母性愛という神話
- 3 戦争を知らない男達――愛国のメモリー
- Ⅱ 越境する性
- 4 うぶな聴き手がいけないの――撹乱する「キャンプ」
- 5 やさしさが怖かった頃――年齢とジェンダー
- 6 ウラ=ウラよ!――異性愛の彼岸
- Ⅲ 欲望の時空
- 7 黒いインクがきれいな歌――文字と郵便
- 8 いいえ、欲しいの!ダイヤも――女性と都市
- 9 季節に褪せない心があれば、歌ってどんなに不幸かしら――叙情と時間
『抒情するアメリカ――モダニズム文学の明滅』 †
memo †
- 抒情(リリシズム)について,叙情詩(リリック)というジャンルに特化されない,文学一般におけるその可能性・普遍的意味作用を探る.
- 「序」で示される,「抒情」の暫定的な輪郭.
- 「抒情とは,逆説の領分」
- 「人生の逆説にあっては,掴み切れぬもの,許されぬもの,あるいは存在の不確かなものこそが,切実なリアリティをもって欲望される」
- 「抒情とは,甘美な情緒の発露を妨げる抑圧的環境によってこそ育まれる」
- 「抑圧の回帰をその本質的な構造とする文学的モード」
- 抒情とは「時間をめぐる情緒の表出」
- こちらは,パッとはつかみにくい.引用されている,ダニエル・オールブライト『英文学における叙情性』(Daniel Albright Lyricality in English Literature)の一節=「時間に侵されない何か,時間の文脈に埋め込まれる宿命にありながらも自由に漂う何らかの美しさ」(が,抒情の核心には浮かび上がるとされる).
- モダニズム
- 「詩にせよ散文にせよ,モダニズム文学とは,個人の内なる想いをナイーヴに表出することを[…]禁ずる思潮であった」
- 「戦争や急速な都市化を時代背景に,さまざまな幻滅や喪失から出発するモダニズムは,もはや,全き個人の情緒を悠々と,あるいは堂々と,表出できない状況下にあって,それでもしかし,創作者の権威を半ば積極的に放棄するポストモダニズムとは一線を画し,あくまで創作の個人的コントロールに信を置いた」.
- このような状況は,「「抑圧の回帰をその本質的な構造とする」抒情の表出にとって,実は絶好の環境を用意する」.
- ということでこの本では,
- 「抑圧されて回帰する個人的情緒――禁欲的自己検閲のもとに発露する明滅的な感傷ないしはロマンティシズム――がアメリカ的な抒情のゆらめきであると見る」
- 「(成就しないままに延命される)欲望の深みと強度において,抒情するモダニズムとは,ロマンティシズム以上にロマンティックであるという逆説を孕む」
- (ここの「成就しないままに延命される」ってあたりが,先の抒情が「時間をめぐる情緒の表出」であるってことと絡むか?).
- スザンヌ・クラーク『センチメンタル・モダニズム』(Suzanne Clark Sentimental Modernism: Women Writers and the Revolution of the Word)から引かれた記述=「いかに感情を制御し分配するのか,どこに感情が許されるのか」.
- サローヤンについての章「涙のゆらめき――ウィリアム・サローヤン」が印象深い.また、著者の色がわかりやすく現れていそう.
- 「彼の作品が描き出す不透明にして高度な涙は,しばしば,親族関係をはなれた親密圏に宿る普遍的な希望と困難を映し出す」.
- 「なるほど,マイノリティ集団である文化的他者の表象を考えることにも政治的な意味はあるだろう.が,知人や友人や同居人など,身近な他人の気持ちを推し量る努力は,文学/文学研究の射程外であり,小中学校の読書感想文で卒業すべきものなのか」.
- 涙の多義性、そのシニフィエとなる感情の不確定性に関する議論の中で、「涙の密度(の高さ)」てな表現が出てくる.
- 出てきた作家メモ:メルヴィル,フランク・ノリス,ウィラ・キャザー,ゾラ・ニール・ハーストン,サローヤン,ジュナ・バーンズ,ヘミングウェイ,テネシー・ウィリアムズ,ポウ,エリオット,カポーティ,ビーチ・ボーイズ
- 最後に、ちょろっとダスティ・スプリングフィールドが出てきた。そっか、クィアって視点からも語られる歌手だったのかー。
- 文献リストのところ,邦訳あるものも,原著しか記されていないようだ・・・引用文献リストだからそうなるのかな
目次 †
- 第一部 モダニスト・ロマンティックス
- 第一章 センチメンタル・メルヴィル――『白鯨』と異性愛の回帰
- 第二章 モダニスト・ノリス――『オクトパス』と詩情の回帰
- 第三章 越境する記憶――キャザーにおける南部の抑圧
- 第二部 モダニズムズの振幅
- 第四章 回帰するハーレム――ハーストンとミュージカル
- 第五章 涙のゆらめき――ウィリアム・サローヤンとモダニズム
- 第六章 『夜の森』の獣たち――ジュナ・バーンズとヘミングウェイ
- 第七章 青いジャンルの誘惑――『欲望という名の電車』とエドガー・アラン・ポウ
- 第三部 拡大モダニズムの射程
- 第八章 侵犯するモダニズム――テネシー・ウィリアムズとT・S・エリオット
- 第九章 喪失のパリンプセスト――カポーティと南部抒情文学
- 第十章 もう一度/もう二度と――ビーチ・ボーイズの明暗法[キアロスクーロ]
- あとがき
- 引用楽曲・引用文献・索引
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