• 建築史家

鈴木博之 『建築の世紀末』 [1977]

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  • 対立的類型による世界把握:「これは世界をいくつかの意識の対立によって構成されるものと分析する。いいかえればそれは世界を多元的にとらえて、背反的事象(antinomy)の集合と見る世界観である。背反(antinomy)が強ければ強いほど、世界の把握は鮮明になり確固たるものになる。二〇世紀の思考は、いかなる類型が世界をもっともよく把握できるかを探求しつづけた。/けれども、こうした対立的類型による把握は、ともすればその対立的類型によってとらえられるものが世界のすべてであり、ひとたび対立的類型が提示されてしまえば、あとに残る仕事はその類型と現実の事象を結びつけることだけである、という錯覚に陥る危険性をはらんでいる。」
    • 「建築の分析は建物を作り出した概念の分析でしかありえなくなってきた。」「建物が寓意的な意味をもった細部を失い、概念の構築物としてかたちづくられるようになってゆくのは、確かにこの時代の特徴である。ひとつの見方によれば、これは近代建築がそれ以前の様式リヴァイヴァリズムの建築を方法的に制覇した結果ということができる。しかしながら、近代建築による世界の方法的制覇は、勝利の進撃ではなく、追いつめられた者たちにとって残された唯一の道であったにすぎないのかもしれない。それまでの建築では、建物の細部が一般の人びとの間でも理解されていたし、生きてもいた。人びとは様式によって統一された建築を、それが過去の様式のリヴァイヴァルであったにせよ、理解することができたし様式の建築言語を読みとることができた。それが、人びとの世界観的前提であった。しかしながら様式的細部を成立させた世界観が、一九世紀から二〇世紀への転換の過程で、もはや昔のように人びとを覆いつくすことがなくなってきたとき、建築家たちは思弁的な方法による以外に、他人と共有しうる形態を見出すことができなかった。世界がふたたび共通の世界観的前提を恢復するならば、それは科学的論理という前提でしかありえなかった。」

読んだもの・読んでいるもの

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  • 建築七つの力(85年に芸術選奨文部大臣新人賞受賞)
  • 建築は兵士ではない(日本文化デザイン賞受賞)
  • 東京の[地霊(ゲニウス・ロキ)](90年にサントリー学芸賞受賞)