河口和也『クイア・スタディーズ』
目次 †
- Ⅰ レズビアン/ゲイ・スタディーズからクイア・スタディーズへ――欲望の理論と理論の欲望
- 第1章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ前史
- 第2章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ
- 1 ストーンウォール暴動
- 2 ゲイ解放運動
- 3 同性愛――抑圧と解放
- 4 ホモフォビアとヘテロセクシズム
- 5 レズビアン・フェミニズム
- 6 「エスニック・モデル」化する同性愛
- 7 セクシュアリティ
- 第3章 クイア・スタディーズ
- 1 クイア理論/研究を取りまく背景
- 2 同性愛者、レズビアン/ゲイ、クイア
- 3 「クイア理論」の台頭
- 4 深刻化するエイズ問題
- 5 クイア・アイデンティティ
- Ⅱ クイア・スタディーズという視角
- 第1章 クイア化する「家族」
- 第2章 資本の欲望とゲイのライフスタイル
第2章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ †
- 「本章では、主に1970年代から80年代にかけてのアメリカ合衆国を中心とした、解放主義的性格をもったレズビアン/ゲイの運動を概観し、またそうした運動を下支えした理論の変遷を見ていくことにする」
- 1 ストーンウォール暴動
- 1969年。「アメリカの異性愛社会でそれまで差別や抑圧を甘んじて受け入れてきた同性愛者たちの表立った実力行使による抵抗」。これを機に、解放主義的運動が展開。「異性愛社会への「同調・迎合」からの脱却」
- 2 ゲイ解放運動
- 「差異による非異性愛アイデンティティという考え方」。
- それまでのホモファイル運動との連続性、非連続性。ストーンウォール暴動に象徴的な、「可視的な傾向」を持つ解放主義的運動。
- ゲイであるというアイデンティティの表明としてのカミングアウトにも「可視的な傾向」。それらは、「社会に同調し、また社会のなかに溶け込んでいこうとするホモファイル運動」と対照的に見える
- しかし、解放主義的運動が、「コミュニティ感覚やアイデンティティ・ポリティクス」というような要素を打ち出せたのは、歴史的、社会的背景が大きい:「1960年代の女性解放運動やアフリカ系アメリカ人を中心とする人種的マイノリティ運動」がとった、対抗文化的運動のあり方からの影響
- 3 同性愛――抑圧と解放
- デニス・アルトマン『ゲイ・アイデンティティ――抑圧と解放』(原著:1971)=「1960年代から1970年代初頭における同性愛解放運動を記述し、その後の運動の理論的支柱」に。カムアウトした研究者たちによる同性愛研究(それは、「新しいアイデンティティの感覚」を示すような実践、だと著者は捉えている)
- アルトマンの中心的な関心は「アイデンティティの問題」。新しいアイデンティティ・ポリティクスの課題=「なぜ同性愛者がスティグマ化されるのかを理解する、あるいはなぜ同性愛者が抑圧されるのか(そして、それといかにたたかっていけるのか)という問題を別の、より政治的なやりかたでとらえること」。アルトマンが、抑圧に関して特に問題としたのが「寛容」という形態のそれ。「「寛容」とは、差異に価値を十分与えることなく差異と表向きの共生を可能にするような差別の一形態」
- このように「異性愛と非異性愛の差異を鮮明に打ち出す一方、そうした見方とは矛盾・対立するような考え方もアルトマンは主張する」=「多様なセクシュアリティの世界では、異性愛と同性愛のあいだには本質的な差異などない」(異性愛に向かわせる命令は本質的なものではなく、文化的な現象だから)。
- なぜアルトマンの議論は両義性をもったか?=「この書作では、ゲイの肯定的なアイデンティティが強調されていることはもちろんなことであるが、それがゲイによる自己肯定以上のものをもたらそうとしているから」。「それは、とりもなおさず、「政治」へと向かう指向性」/アルトマンは、ゲイ解放を「性解放や性革命という時代的雰囲気のなかで、自由な性的関係の構築を模索するコミューン」の実現として構想していた(従来のゲイの世界は「ゲットー・メンタリティ」があると退けられた)
- アルトマンにおけるゲイ解放の政治的目標=異性愛と非異性愛のあいだの敵対関係の解消。「多形倒錯的総体」に向かうような性解放の動きによって
- 4 ホモフォビアとヘテロセクシズム
- ホモフォビアという概念は、1972年にジョージ・ワインバーグによって提唱。(同性愛の欲望の側ではなく)「同性愛を忌避し、恐怖・嫌悪する社会の側を問題化した」ホモフォビア概念は、レズビアン/ゲイ研究にとってパラダイム転換といってもよいほどの変化だった。/ホモフォビア概念がもつ問題。
- 5 レズビアン・フェミニズム
- 6 「エスニック・モデル」化する同性愛
- 7 セクシュアリティ
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