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坂倉準三(1901~1969)は建築家.


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メモ

  • 2009年の二つの坂倉展の充実のカタログが書籍として販売されだしたようです=こちらこちら [2010-08-16]
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  • 『新建築 住宅特集』の2009年10月号から,特別記事として「坂倉準三と坂倉準三建築研究所」が掲載.10月号では前編として,田路貴浩「剛毅と柔軟 坂倉準三の大きな精神」,北村紀史「組立建築に見る、技術をデザインする精神」が,同11月号には中編として太田隆信「所員の目線で 1960年代、「大屋根」から「コートハウス」へ」が,同12月号には後編として中編の続きが掲載された.
  • 下でも言及した建築史家の青井哲人が,『10+1 web site』に「建築・都市への「インテリア」的眼差し──「建築家 坂倉準三展」を通して」を寄稿されている.特集=インテリアデザイン史を遡る ということで,他にも柏木博による『シャルロット・ペリアン自伝』レヴューなどが読める.
  • 坂倉展のカタログ,汐留の方が,amazonに中古で出てました.鎌倉のも汐留のも,会期最後にはカタログが売り切れでした.汐留の方のは,購入希望の人は注文できるようになっていましたし,鎌倉の方は,本屋にも並ぶにようになるという情報を見かけた気もするのですが,どうなるのでしょう.追記:2010年に発売→こちらこちら [2010-08-16] /あと,このページで情報書いていますが,磯崎新が鎌倉展の方のカタログのの文章+その続編の文章(『住宅建築』に掲載)で書いていたような話を,『GA JAPAN』100号(特集=世界から見た日本の現代建築)の二川幸夫との対談「日本建築の価値を決めたモノ」でも語っていました.
    • カタログについて追記:汐留展の方のカタログについては,発行元のアーキメディアのページによると,「汐留ミュージアムのショップもしくは全国主要書店でもお買い求めいただけます」とあって,「丸善 丸の内本店/丸善 日本橋店/ジュンク堂/紀伊国屋書店/八重洲ブックセンター/南洋堂書店/柳々堂書店」と書店名が挙げられています.
  • 軽井沢のル ヴァン美術館では2009年8月現在,企画展「建築家坂倉準三とユリを巡る人々」が開かれているようだ.この美術館は文化学院関係の施設で,坂倉の夫人のユリ(百合)は文化学院の創立者西村伊作の次女だった.そういう関係での企画だろう.この場所には,坂倉の設計した「飯箸邸」や最小限住宅「加納邸」(いずれも文献:75→09年の作品集で紹介)が移築されているそう.
  • 新宿西口(1966) 地上から
    • ターミナル,「広場」部分だけでなく,奥の小田急百貨店/ターミナルビルも坂倉事務所の設計.[文献(下記):→『現代日本建築家全集』 p.78-89/カタログではより詳しく.鎌倉展メモを参照のこと]
新宿駅西口 - a set on Flickr

[NEW] 鎌倉での坂倉展メモ

  • 展示とカタログの解説中,複数あるターミナル計画系のものを執筆しているのが,青井哲人(『植民地神社と帝国日本 』『彰化 一九〇六年』)だった.カタログでは論文「難波・渋谷・新宿――戦後都市と坂倉準三のターミナルプロジェクト群」の執筆もされている(pp.171-178).青井さんは,はてなダイアリーで研究室日誌を綴っておられる(VESTIGIAL TAILS/TALES : akihito aoi’s blog).ダイアリー内を「坂倉」などのキーワードで検索すると(リンク先ページ,右側のナビゲーション欄の一番下からできる),調査・研究の過程が垣間見られます.展覧会に併せて開かれたシンポジウムのメモも(こちら).
  • 丹下健三の論文「Michelangelo頌――Le Corbusier 論への序説として――」の終わりに出てくる,「不等辺六角形のあたゝかい卓子[テーブル]を囲んで坂倉氏は私達に語り聞かせるのである./Le Corbusierは今やclassicを創りつゝあるのだ,と」のテーブルが,出展されてるのに,二度目に見に行った時に気づいた.美術館二階,四辺の二辺分に近いL字型のメインの展示室を見た後,一度中庭を見下ろせる半屋外部分に出てから,もう一つの小さな展示室に入る.そこには,大きなパネルでの年譜の展示や,坂倉の手帖だとか写真だとか,小物の展示があったのだが,その真ん中のスペースには,ファイリングされた関連資料を各自手にとって座って読めるように,テーブルと椅子が置かれていた.その机がそうだった.テーブルについて解説した小さなパネルも机上にあったけど,実物ですよねぇ.▼この項目冒頭の,丹下の文章については,こちらで取り上げた,藤森さんの丹下本から引用.丹下の原文を区切り区切り引用しながら丁寧に解説しれくれています.▼また,カタログに収録されている磯崎新のテキスト「坂倉準三の居場所Ⅰ」でも「Michelangelo頌」/不等辺六角形のテーブルのシーンは象徴的なものとして言及されている.カタログの解説本文,p.60にテーブルの写真/解説がある.▼ちなみに,その二度目の鎌倉だった日に,先ほどの二つの展示室の間の半屋外部分から行けるカフェに磯崎さんがいらした.カタログで文章を読んだ後だったのであの場で語られている姿には何か感慨を覚えた.
  • つづく(予定

文献

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『大きな声―建築家坂倉準三の生涯』

大きな声―建築家坂倉準三の生涯

坂倉の作品集・回顧録

  • [鹿島出版会,1975,奥付に800部限定版と記載,装幀:亀倉雄策] → [鹿島出版会,新装版,2009] →amazon
    • 新装版には,坂倉の論文があらたに5本再録されている.
  • 「準三の急逝した1969年から6年間かけてつくり上げられた。」「坂倉準三の唯一無二の定本、復刻。ル・コルビュジエの弟子からパリ博でのデビュー、戦後の都市建築へ。セルト、ペリアン、前川國男が人物像をつづり、歴代所員が作品を解説したモダニズムの巨匠の全記録。」
  • 目次
  • 収録作品
    • パリ万国博日本館
      • 収録作品中一番大きく取り上げられている(pp.54-73).写真だけでなく,いくつかの図面も紹介.発表当時の海外誌での批評の抜粋掲載などもあり.
    • 新京南湖ボートハウス
    • 等々力飯箸邸
    • 組立建築
    • 鎌倉近代美術館
    • 新宿西口広場
    • 家具
  • 東大文学部時代からの友人である富永惣一や,ル・コルビュジエの事務所での同僚で,その後も関わりをもったシャルロット・ペリアンらの追悼文・回顧文も印象深い.

『現代日本建築家全集 11巻 坂倉準三/山口文象とRIA』

  • [三一書房,1971].この本は所蔵している図書館も多そう.こちらも,坂倉の死後の出版.
  • 坂倉関係のページは,pp.11~101(作品:解説執筆=藤井博巳+坂倉の論文)+pp.217-218/pp.221-239/pp.250-253(順に略歴,作品年譜,文献目録+ 参考文献目録)
  • 収録作品
    • 神奈川県立鎌倉近代美術館
    • パリ万国博日本館
    • 塩野義製薬研究所
    • 羽鳥市市役所
    • 呉市庁舎・市民会館
    • 岐阜市民会館
    • 芦屋市民会館ルナ・ホール
    • 新宿西口広場・ターミナルビル
    • 渋谷ターミナル
    • 難波ターミナル
    • 新京南湖住宅計画
    • 霞ヶ浦水交社
  • 論文(「建築の記念性」というタイトルが大きく付いているが,それぞれ別の機会に発表されたテキストの再録)
    • 「巴里万国博日本館について」
    • 「忠霊塔建設と建築の記念性」
    • 書簡「宮崎県知事黒木博様」
  • 付録の文献目録(坂倉によって書かれた論文のリスト)は,『大きな声』の方が数多く挙げられている.

建築家 坂倉準三展 カタログ

2009年に行われた二つの展覧会カタログ.

住宅建築 2009年 07月号 特集=坂倉準三住宅設計の系譜

住宅建築 2009年 07月号 特集=坂倉準三住宅設計の系譜

坂倉の住宅建築についての雑誌特集

  • 磯崎新,石山修武,古谷誠章らのテキストが収録.目次
  • 磯崎さんのテキストは「坂倉準三の居場所Ⅱ」で,その「Ⅰ」は上の神奈川近美での展覧会のカタログに収録.

「坂倉準三の仕事」展カタログ

1997年の展覧会カタログ

  • 神奈川県立近代美術館では,2009年以前にも1997年に坂倉に関する展覧会「坂倉準三の仕事」展が,同館の開館45周年記念として開かれている(1997年1月4日-2月2日).
  • 63pのカタログで,展示資料の紹介・解説の他,同館の太田泰人による論文「パリから鎌倉へ―坂倉準三の仕事」(pp.10-14)や,坂倉事務所の所員であった駒田知彦による「坂倉さんと創業期」(pp.15-21)などが収録されている.

『素顔の建築家たち―弟子の見た巨匠の世界〈01〉』

素顔の建築家たち―弟子の見た巨匠の世界〈01〉

弟子が語る坂倉

  • 「日本近代建築史の草創期を飾る大建築家を第三者の視点から捉え直した日本建築家協会主催の連続シンポジウムをまとめる。1巻には吉阪隆正、大江宏、アントニン・レーモンド、今井兼次、坂倉準三、堀口捨己、村野藤吾を収録。」 →amazon
  • 坂倉についての章(pp.164-193)で,「弟子」として講演しているのは,駒田知彦(昭和15年に坂倉事務所に入所).冒頭に花田佳明による講演「軽やかにモダニズムを体現した人」,続いてメインの駒田による講演「強い意志,高邁な心構えがモダニズムへと押し出した」,引き続いて駒田による花田を聞き手にしたトーク(「アイデア,イメージを常に大切にしいた」)が収録.簡単な略歴+主な作品リストもあり.
  • トークの冒頭で駒田は,坂倉事務所に入った時,どんな雰囲気で仕事が行われていたかと尋ねられて,「坂倉さんから図面の与えられたというような記憶は全然ありません.ただ口頭でイメージを表現されたことはあります」と語っている.

『ル・コルビュジエと日本 』

坂倉について触れたテキストが収録

  • 「1997年に東京で開催されたシンポジウム「世界の中のル・コルビュジエと日本」で発表されて報告を集めたもの」. →amazon
  • 太田泰人「ル・コルビュジエ,ペリアン,坂倉準三」(p.101-122).太田は,坂倉が設計した神奈川県立近代美術館に勤務.
    • 関連:09年にペリアンの自伝の翻訳がみすず書房から刊行された=『シャルロット・ペリアン自伝』.二段組みで400ページを超えるボリュームで,もちろん坂倉との話も複数箇所で登場する.
  • 佐々木宏「ル・コルビュジエと日本の建築家たち」(p.123-142).佐々木には,この発表のテーマの著作として『巨匠への憧憬―ル・コルビュジエに魅せられた日本の建築家たち』(→amazon)があり,もちろん坂倉についての記述がある.
  • この本には他に,藤森照信「ル・コルビュジエと丹下健三」,磯崎新「一九六〇年、日本はコルビュジエの忘却を始めた」)なども収録,.

『丹下健三』,『戦時下日本の建築家』

戦前・戦中の坂倉について,また,前川國男,丹下健三らとの関わり

  • 前者は藤森照信による大著の評伝・丹下作品集で,色々と丹下と坂倉の関わりについて語られています.が,なかなかアクセスしづらい本だろうので,まずは同じあたりを扱っている,藤森さんによる講演「戦時下に育まれたものとは何か」でしょうか.これは前川についてのシンポジウムでの講演ですが(『前川國男―現代との対話』収録).
  • 後者は,井上章一の著書で.同じような話が読めます.藤森,井上どちらの論も,パリ万国博日本館についても扱っています.もちろん,ル・コルビュジエ周りの話も.
  • 坂倉,前川,丹下,は順に,1901年,05年,13年生まれ.ル・コルビュジエの事務所で働いた/修業した期間は前川が1928~30年,坂倉が31~36年となっている.ちなみに,戦後にフランスに留学,ル・コルビュジエのもとで働いた,吉阪隆正は1917年生まれで,期間は50~52年.
  • あと,カタログの磯崎さんの文章も関連

『昭和モダン建築巡礼 東日本編』,『藤森照信の特選美術館三昧』

坂倉事務所設計の建物が登場しています.あなたの蔵書にあれば,あらためて見てみよう.

  • 前者:羽島市庁舎が取り上げられている.岐阜県羽島市は坂倉の出身地.
  • 後者:神奈川県立近代美術館
  • 前者の「西日本編」でも,箕面観光ホテル(写真)と市村記念体育館(写真と解説)が,「寄り道巡礼」として取り上げられています.

『ヨコハマ建築案内 1950-1994』

神奈川/横浜にある坂倉事務所設計の三つの公共建築

  • [吉田鋼市・著,鹿島出版会,1994] →amazon
  • 第二章「戦後復興―「会館知事」内山岩太郎の活動」の中で,坂倉事務所設計の神奈川県立近代美術館(1951),シルクセンター(1959),神奈川県新庁舎が,前川國男による紅葉ヶ丘の文化施設群などと並んでとりあげられている.この「会館知事」ってのも気になります.

『小さな箱―鎌倉近代美術館の50年』

その名の通りの本で,坂倉自身によるものも含む,建築について言及したテキストがいくつか読める

  • 坂倉準三「鎌倉の現代美術館」(pp.48-54),太田泰人「坂倉準三の建物,その歴史と価値」(pp.252-256)など.鎌倉近代美術館は,神奈川近代美術館の「通称」
  • 神奈川近代美術館について扱ったものとして,『建築ジャ-ナル』1994年6月号での特集=「時代を渡る価値―坂倉準三・神奈川県立近代美術館」がある(pp.11-37).再整備計画が取り沙汰された時のもの.
神奈川県立近代美術館(坂倉準三,1951) by surround, on Flickr

その他

  • 「さよなら渋谷東急文化会館―坂倉準三,ル・コルビュジエの威光を今,味わう」 『東京人』 2003年8月号掲載(pp.148-153)の,川上典李子執筆の記事.東急文化会館の解体を機会に書かれてたもので充実している.