[読書メモ/記録 2007年5月分]
目次
■トマセロ『心とことばの起源を探る―文化と認知』
- (マイケル・トマセロ著, 大堀壽夫・中澤恒子・西村義樹・本多啓訳, 2006, 勁草書房[シリーズ認知と文化 4], 装丁:板谷成雄) →amazon
- 【目次】[謝辞][第一章 謎と仮説 1][第二章 生物学的遺伝・文化的継承 15|1 生物学的遺伝 18|2 ヒト以外の霊長類の文化 32|3ヒトの文化進化 46|4 ヒトの個体発生 60|5 二重継承モデル 67][第三章 共同注意と文化学習 71|1 赤ちゃんの初期認知 72|2九か月革命 79|3 九か月革命についてのシミュレーションによる説明 92|4 初期の文化学習 104|5 文化の個体発生的な起源 123][第四章 言語的コミュニケーションと記号的表示 127|1 言語習得における社会的認知の基盤 129|2言語習得における社会的やりとりの基盤|3 感覚運動的表示と記号的表示 165|4 注意の操作としての記号的表示 174][第五章言語の構文と出来事の認知 179|1 言語の最初の構文 181|2 言語の構文学習 192|3 言語的認知 201|4 言語と認知 212][第六章 談話と表示上の再記述 215|1 言語的コミュニケーションと認知発達 219|2 社会的知識と物理的知識 232|3メタ認知と表示上の再記述 254|4 視点の内面化 263][第七章 文化的認知 269|1 系統発生 272|2 歴史 277|3 個体発生 283|4 プロセスの重視 288][訳者解説 291][参考文献][事項索引][人名索引]
- 人間という種に特有の,認知的スキル(認知的な適当の仕方)はなにか?
- 進化的な(系統発生的な)時間,歴史的な時間,個体発生的な時間
- 自然的なアフォーダンスと意図的なアフォーダンスの区別
- ある能力,認知,の基盤となっているものは何か?
- 社会的認知のスキル,霊長類としての一般的なスキル
- 他者もまた意図を持つ主体であるということを理解する能力
- 動き,手段,と意図
- 意図,伝達意図,(何かに)注意を向けさせる意図/その意図の表現としての(伝達)行為
- 「伝達意図を理解することは,意図を理解することの特殊な場合」「つまり,伝達意図を理解することは,自分の注意の状態に対する他者の意図を理解すること」/「他者が自分に対してどのような意図を持っているか,自分の意図の状態に対してどのような意図を持っているかをモニターできる子供だけが,伝達意図を理解できる」
- 注意の共有
- 「言語的な記号とは,長い歴史の間に文化の中で蓄積されてきた,世界に対する間主観的なさまざまな解釈を具体的に体現した物」 p.129/「認知的観点から見て言語記号が真にユニークなのは,記号はそれぞれ物や出来事に対する特定の視点を具体的に体現しているという事実だ」 p.143
- 「言語の指示機能とは,ある人間が,別の人間の注意を世界の中の何かに向けさせようとする社会的な行為である」 p.131
- 共同注意場面/(wittgensteinの用語で言うと「生活形式(form of life)」),他者とのやりとりの形態
- 幼児の他者理解の発達:生きている主体→意図をもつ主体→心的状態をもつ主体
- 談話への参加/「他者との談話の中で,幼児は物事についての多数の対立する信念や視点を経験するのであるが,こうした経験が,自分の心とは似てはいるが異なるところもある心をもった主体として幼児が他者を捉えるようになる過程に不可欠な要因であることはほぼ確実である」
- 人間にとって意識の果たす役割の重要性/意識とは何か?/それはどうして獲得された/発達したのか?
- 「合意や理解がほとんど成り立たぬような領域では、意外な事柄を予期するべきだろう。そして、そうした事柄は、私たちの死角から、あるいは真後ろからさえ現れ出てくるかもしれない。意識に対する私たちのとまどいそのものが、なぜ意識が重要かという問題のカギを握っているということはありえないだろうか。」(p.10)
- 知覚と感覚、はそれぞれの経路を持つ? 別個の道筋をたどってに進化してきた?
- 感覚に伴う感情、「質的な深さ」、実感されるもの、自己のものとして感じられるもの、自己を感じられるもの、「主体と外の世界との個人的な相互作用」
- この本の中の赤いスクリーンを目にする例において、感覚は「赤すること」と表現されている
- 「感覚とがいったいどんな種類のものなのか、くわしく見てみなければいけない。分析し、記述し直し、生物学的に進化した脳の中で起きていてもおかしくない種類のものと結びつけられるような方法を探す必要がある。」(p.90)/脳の側で起こっていることと感覚の側で起こっていること
- 第4章で語られる「感覚と感情と知覚の進化についての物語」
- 感覚を作り出す経験と,身体表現を作り出す経験.それぞれの特徴(の共通点)/感覚も一種の(身体的)行動である? もともとそうであった?
- 感覚は共感の基盤?(第5章)
- 「現象的経験の本質を理解する非言語的な方法がある」? 芸術作品について考えること/「感覚の性質を伝えようとする芸術家たちの努力」「自己相似性,韻,時間的な厚み」
- フィードバック・ループの形成,自己生成と自己維持の効果
- =Jared Diamond Third Chimpanzee: The Evolution and Future of the Human Animal
- 第2部】[4 浮気の科学] 「社会生物学は、ヒトの社会行動がどのようにして進化してきたのかを理解するのに有用なのですが、それでも、この方向であまりに突き進んでいくべきではないでしょう。ヒトの行動のすべてが、残す子の数を最大にすることを目指しているわけではありません。文化というものがいったん設定されると、それは新しい目標を持つようになります。今日多くのヒトは、子供を持つべきかどうか議論しますし、多くのヒトは、その時間とエネルギーを他のことにあたることを選びます。進化的説明は、ヒトの行動の起源を知る上にのみ有効なのだと私は思います。進化的説明のみが、今日の人間の行動を理解する唯一の方法であるとは思いません。 p.142」 ふーむ
■ハンフリー・喪失と獲得―進化心理学から見た心と体
- (8 奇形の変容)「自然がなぜ、望ましい特性をその生物学的な限界にまで推し進めなかったのかという理由」
- ジャレド ダイアモンド『人間はどこまでチンパンジーか?』 の一節=「……「差し引き問題(トレードオフ)」の概念を使って考える……動物の世界には、まったくただであることやどこからみても良いことなどは存在しないのです。あることをすれば、時間が場所かエネルギーを使うことになり、それをほかのことをするのに使うこともできたわけですから、どんなことにも損失と利得があります。」
- BksPnkrBlankSlate ピンカー『人間の本性を考える』
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